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とまり木の舎|西原村モデルハウス

阿蘇西原村に建つモデルハウス・はじまりのお話

林田
林田
2022.12.06

日中はいまだにぽかぽか陽気な12月。

建築中の新外スタジオと西原村モデルハウスの足場が解体され、外観があらわになりました。

内部では左官工事や器具付け、家具工事などが進行中で、完成する姿が想像できるように。

はじまりのお話をずっと書こうと思ってきましたが、もはや完成間近。

建物が建っていく様子はとても楽しみな反面、設計者としてはプレッシャーと向き合いながら詳細を詰めていくため、とても長く重い期間でもあります。

言葉にするのを先送りにしてしまいました。

 

 

今日は意を決して、西原村モデルハウスのはじまりのお話を少し。

時は2022年3月に遡ります。

具体的なクライアントのないモデルハウスでは、個々の家族の暮らしについてヒアリングをしながら進めていく注文住宅の流れとは少し異なります。

日頃から「自分たちが本当に住みたいと思える家」を求めて、スタッフ間で考えを深めたり、試行錯誤したり、話し合ったりしています。

モデルハウスでは、私たちが常に考えていることを素直に、具体的に表現する場でもあります。

大切にしたいこと、実現してみたいことを沢山話し合いました。

 

注文住宅でも同じように大切にしている考えですが、西原村のモデルハウスでは特にこの二つのコンセプトを主軸に計画をまとめていくことに。

 

・土地の魅力を生かし、自然との接点をつくる

・風景の一部になる佇まい

 

 

【土地の魅力を生かし、自然との接点をつくる】

 

 

はじめて土地を見に行った時、細い川沿いの土手に、両手いっぱいに広げたような横広の形をした大木が立っていました。

葉は落ち、細く長く張り出した美しい枝先が敷地の中まで思い切り伸びていて、冬の太陽の下に複雑な模様の影を落としていました。

子どもの頃によく読んでいた「The Giving Tree」という絵本を、ふと思い出しました。

大きさから予想するに、おそらく何十年もそこに立ち続けて巡る四季を何周もしてきたのでしょう。

ここに建つ家は、ここで過ごす人は、この木とともに物語を紡いでいくのがいいな、と直感的に思いました。

 

 

住まいについての希望は沢山あると思いますが、実際の暮らしの中で幸せだと感じる瞬間は、案外窓の外の風景にあったりします。

人間活動をそつなくこなすことが目的ではなくて、心身を癒す場所としての住まい。

 

木漏れ日、風でなびく枝、葉が擦れ合う音、雨が落ちてくる空の様子などを見たり聞いたり感じたりしていると、余計な考えが取り除かれていくのを感じます。

また、木を拠り所に鳥や蝶や虫たちが集まってきて、小さな世界を覗かせてくれます。

一本の大木が与えてくれる様々な気付きを、素直に享受できる住まいが一つ目のテーマです。

 

【風景の一部になる佇まい】

 

日本では、住宅の佇まいは住み手の自由裁量に任されているところがあり、一部の地区を除けば色も形も思うがままなところがあります。

けれども、雰囲気がいいなと思う家はどれも、素朴な形、自然界がつくる色、自己主張しない空気感を纏っていて、単純にその地域の風景の中にすっと溶け込んでいくような佇まいであることがほとんどです。

 

家の中からどう見えるかということと同じくらい、町の一部として家の外からどう見えるかということへ配慮をすることが、長く愛される家であるためにとても大切な事だと思います。

 

 

ここは開けた平野で、辺りを囲う低い山々の稜線が美しく連なっていく町。

川がつくる自然なうねりがあり、整形ではない土地の形状が特徴です。

山の稜線をなぞるような二つの山型の屋根を並べ、川のうねりを平面計画にも呼応させることにしました。

自然から導かれる建物の輪郭が、次第に町の風景の一部になっていくことが二つ目のテーマです。

 

 

さて、どんなお家になるのでしょうか。
see you soon.

 

 

   
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